人工膝関節(TKA)をすると膝がコツコツ音がするけど大丈夫?その原因とは?
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下TKA)は、
変形性膝関節症などに対する標準的な手術療法です。
TKA後の膝は、厳密にいうと元の膝とは異なる状態です。(人工物に置き換わっているので当たり前ですが…)
そんなTKA後の患者さんから多く聞かれる訴えとして、
「膝がコツコツ鳴る」という症状があるそうです。
人工物が膝の中にあるってどんな感じなのでしょうか?
当然ながらこれは当事者にしか分かりません。
ただ、自分の骨だった部分が人工物に変わるだけでなく、
厳密には関節の中に存在していた半月板や靭帯なども多くの場合は切除されます(靭帯は残す場合もある)。
このような組織には固有受容器と呼ばれる感覚器が存在していますが、
それらがなくなることで「自分の膝じゃない感じがする」と訴える人もいます。
しかしながらこれらは、ある程度の時間経過によって、人工物に対しての一種の慣れのようなものが生じ、
ほぼ違和感がなくなると同時に、術前の疼痛の消失と関節可動域のかくさいが見込める非常に有用な手術です。
そんな中でも、TKA後の患者さんから多く聞かれる訴えとして、「膝がコツコツ鳴る」という症状があるそうです。
一体これは何が原因なのでしょうか?
人工膝関節全置換術(TKA)ってどんな手術?
人工膝関節全置換術(TKA)は、
文字通り、変性した膝関節を人工物に入れ替える手術です。
百聞は一見にしかずということで以下の画像を見てもらえればイメージがつきやすいでしょう。
関節の間が狭小化してしまっている部分を、
右図のような人工物(金属やプラスチックのプレート)に入れ替えています。
この手術によって、術前に生じていたような歩行時の痛みは解消され、
同時に行われるリハビリテーションなどによって関節可動域の拡大も図れます。
TKAに関する詳しい記事はこちらを参照して下さい!
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
→【変形性膝関節症】TKA術後のリハビリテーションって何をするの?
TKA後の膝はコツコツ音がする?
TKA後の膝関節は、
ある程度の時間が経てば、人工物に入れ替わったことへの違和感などは消失することがほとんどです。
しかしながら、例えば立った状態で、
手術側の足を軽く曲げた状態でぶらぶら揺すったりすると、
コツコツ…コツコツ…
とたびに音がするのです。
このような音がして大丈夫なのでしょうか?
そしてこの原因はなんなのでしょうか?
元々生体の膝関節には、
以下の図のように関節内に靭帯や、半月板といった組織があり、
これらの張力や弾性力によって、
膝が前後左右に引っ張られても、圧縮されてもぐらつかないようになっているのです。
しかしながら先に解説したように、
TKA後はそれらの靭帯や半月板などの組織を除去し人工物に入れ替えます。
特に関節内の靭帯を除去することによって、
人工物同士をつなぐ役割をするのは、側方の靭帯と周囲の筋肉だけとなってしまします。
すると、膝関節を軽く曲げた状態で筋肉を弛緩させると、
人工関節同士を制動することができず人工関節同士がぶつかることでコツコツ音がするのです。
しかしながら、音がなるのは原理上当然のことなので特に心配することはありません。
そういうものなのです。
ただ、最近では関節内の靭帯を切らずに温存できる種類のインプラントも誕生しており、
中にはコツコツと音がしないような人工関節も存在しています。
→TKAのインプラント「BCR型」や「Medial Pivot型」とは?
まとめ
今回は、TKA後の患者さんから多く聞かれる訴えとして、「膝がコツコツ」という症状について、
その原因などを解説しました。
コツコツなる音の正体は、
人工関節同士がぶつかる音なんです。
人工関節の構造上そのような音がなるものなので特に心配は要りません。
ただ、そこに痛みが伴うようなことがあれば、何か別の要因が隠れているかもしれないので、直ちに病院を受診するように心がけましょう。
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