人工膝関節全置換術(TKA)後の筋力回復は難しい?元通りまでの期間は?
人工膝関節全置換術(以下:TKA)後において、
筋力の回復の程度は重要な機能改善の指標となります。
それは、筋力そのものの改善が、歩行はじめとして多くの身体機能に寄与するためです。
では、TKA後の筋力の回復は容易なものなのでしょうか?
TKAは、
変形性膝関節症や関節リウマチによって生じた
膝関節の変性を起因とした疼痛や歩行障害に対する標準的な手術療法です。
→変形性膝関節症の手術療法「TKA」とは?他にも手術の種類があるの?
主な効果は除痛(特に荷重時痛)であり、
除痛によって歩行をはじめとする多くの日常生活動作の改善が期待できます。
このような改善において、
重要なファクターの一つに「筋力」があります。
一概に筋力といっても様々な筋肉によるものがありますが、
とりわけTKA後の回復で重要視される筋肉は「大腿四頭筋」です。
(手術によって直接的な侵襲が加わることや、歩行や階段昇降に重要となる筋肉であるため)
さてこのような筋力は、TKA後でもすぐに回復するのでしょうか?
また、どれぐらいの期間で元どおり(術前)まで改善するのでしょうか?
TKA後の「大腿四頭筋」の筋力の回復は容易?
リハビリテーションに従事する者や、実際にTKAを受けた患者なら答えは歴然だと思うのですが、
TKA後の「大腿四頭筋」の筋力の回復は容易ではありません。
それは、手術によって大腿四頭筋の一部を切開しており、筋肉の収縮においても疼痛が生じるためです。
(全ての手技で切開するわけではないですが、筋膜として連結している部分などの切開も同様に疼痛が生じます)
→人工膝関節全置換術(TKA)における皮切後の侵入方法とは?リハビリへの影響は?
また、術後に生じる浮腫なども、反射性の筋力抑制という機構が生じ、大腿四頭筋の筋力を低下させます。
つまり、術後早期は手術の影響による筋力の低下が生じやすい状態であり、
すぐに改善させるのは容易ではありません。
これらの機能改善にはもちろん、リハビリテーションの一部として理学療法である運動療法が行われ、積極的な筋力訓練などで改善を目指すのです。
自宅でできる簡単な筋力トレーニング方法はこちら
→大腿四頭筋(クアド)セッティングの効果や方法は?
TKA後の「大腿四頭筋」の筋力の回復まではどれくらいの期間がかかる?
では一体、TKA後の大腿四頭筋は、
どれぐらいの期間で元どおり(術前)まで改善するのでしょうか?
当然ながら年齢なども加味してた個人差や、運動療法などを行なった頻度などにも影響を受けるため、
一概には言えませんが、日本国内外を問わずたくさんの報告がなされています。
その中でも多く一致している見解としては、術後3ヶ月から半年があります(Takubo A et al:2017、大八木ら:2016、大河原ら:2016)。
反対に術後早期には大腿四頭筋の筋力低下が報告させています(大河原ら:2016)。
※TKAにもいくつかの種類がありますが、筋力回復の側面においてそれらの差はあまり大きくないということはすでに述べられています(野口ら:2019)。
多くの場合には入院中に元どおりの筋力の改善が得られることは難しく、
概ね、術後3ヶ月から半年ほどの時間が必要ということは間違い無いのでしょう。
TKA後の「大腿四頭筋」筋力の改善はなぜ重要?
「大腿四頭筋」とは、
膝関節の前面から大腿前面にかけて存在する大きな筋肉です。
主な作用は膝関節を伸展(伸ばす)ことであり、
歩行や階段昇降時に身体を支えるために非常に重要な筋肉です。
また、大腿四頭筋力の低下は、疼痛や日常生活の障害度に影響していることなども報告されています(O’Reilly SC et al:1998)。
現状の医学やリハビリテーションの領域において、TKA後には「大腿四頭筋」の筋力の回復が重要視されている理由の一つとなっています。
まとめ
今回は、人工膝関節全置換術(TKA)後の筋力回復は難しいのか?
そして大腿四頭筋の筋力が元通りになるまでの期間などについて解説しました。
術後の筋力の回復は容易ではありません。
それは手術による疼痛や浮腫などの侵襲による影響が多分に現れ、うまくトレーニングを行うことも難しいのです。
それらは徐々に回復し、無論それらのトレーニングを続けたり、日常生活の中で活動していくことによって、
おおよそ3ヶ月から半年程度で元の筋力に回復することが一般的なのです。
つまり、入院中に元どおりになるまで頑張るというのはちょっと難題であり、
大事なことはトレーニングなどを欠かさずに継続していくことなのでしょう。
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