下肢の手術後に注意すべき血液データは?CRPやDダイマーの持つ意味は?
下肢の手術後は、
様々な合併症などのリスクが存在します。
そのため、それらの危険因子を同定するために、
「血液検査」が非常に重要です。
どのような指標がそのような意味を持つのでしょうか!?
下肢の手術後には、どのような合併症が存在するのでしょうか!?
手術後に注意すべき合併症として、
・貧血
・炎症(感染を含む)
・血栓症
などが挙げられます。
代表的なTKA後の合併症はこちら
→変形性膝関節症の手術に伴うリスクは?感染や血栓に注意!
これらは、
離床を遅らせることはもとより、
疼痛を長引かせることもあり、
術後のリハビリテーションを阻害する因子の一つでもあります。
それだけでなく、
血栓症に起因する「肺塞栓症」などは、直接的に命の危険に関わる重大な合併症です。
→変形性膝関節症の手術に伴うリスクは?感染や血栓に注意!
→人工股関節置換術のリスクや合併症は?脱臼や血栓に注意!
これらの合併症やリスクの有無を判断するのに重要なのは、
【血液データ】です。
医師はもとより、術後の管理を担う看護師や、運動を推進する理学療法士なども必ず知っておかなければならない知識です。
そこで今回は、下肢の手術後に注意すべき代表的な血液データに関して解説します。
下肢の手術後に注意すべき血液データは?
術後の血液データは、当然ながら、逸脱するデータをすべて把握し、
それらは術後において正常な反応なのか?
あるいは特異的でリスクが存在するのか?
などを知る必要があります。
その中でも特に特徴的な所見を示し、
必ず把握しておきたい数値は、
・CRP(C反応性蛋白)
・WCB(白血球)
・Hb(ヘモグロビン)
・D-ダイマー
などが挙げられます。
それらが持つ意味や基準値はどれくらいなのでしょうか!?
CRP(C反応性蛋白)
CRPは、肺炎球菌のC多糖体と反応する蛋白で、
急性期炎症マーカーの代表となります。
CRPには、疾患特異性がないため、手術後の炎症はもとより、
感染や悪性腫瘍、心筋梗塞や外傷などでも高値を示します。
炎症のスクリーニングとしての意味合いが強く、1日の中での変化が大きいともされています。
それでも、継時的な測定は、治療効果の判定などにも有効です。
リハビリテーションなどでも、CRPの値と疼痛の程度を関連付けることも、臨床推論の一つのヒントになります。
なお、基準値は、0.3mg/dl以下です。
WCB(白血球)
WBCは白血球数です。
血液の細胞成分の一つであり、外界から体内に侵入する細菌や異物を除去するために働きます。
CRPと同様に急性期の炎症を見るために有効です。
ただし、WBC実際の炎症がなくても激しい運動やストレスでも上昇することがあるので注意が必要です。
なお、基準値は、成人において4500〜9000個/㎟です。
Hb(ヘモグロビン)
Hbはヘモグロビンと呼ばれ、
ヘモグロビンが低下することで「貧血」が生じます。
特に手術後は、大量の出血や、術後の微小な出血が続いた場合に低下します。
貧血の状態では、急激な意識消失が生じることや、
易疲労性、やる気の欠如などが生じ、リハビリテーションの進行自体の阻害となることもしばしばです。
なお、基準値は、男性13〜17g/dl、女性12〜15g/dlです。
詳しくはこちらから
→術後は「貧血」に注意!その原因や注意すべき検査所見とは?
D-ダイマー
手術後の出血に対して、生体の反応では、血小板が集まって固まり、傷口を塞いで出血を止めます。
次にフィブリノゲンがフィブリンという物質に変わって、血小板の隙間などを埋め、傷口を塞いで止血をします。
このフィブリンによって傷口が止血されることは、正常な反応なのですが、血流を阻害してしまうことがあります。
そのようにならないために、プラスミンという酵素が働きで、血液凝固因子であるフィブリンを溶解します。
そのとき分解された物質がFDPと呼ばれ、その分解過程で、Dダイマーが出現するのです。
つまりD-ダイマーは、血栓のリスクの程度を把握するための指標です。
D-ダイマーが高値であると、いわゆる「エコノミー症候群」と呼ばれる【深部静脈血栓症】から肺塞栓症などの重篤な疾患を招くのです。
なお、基準値は、150ng/ml以下とされています。
まとめ
今回は、下肢の手術後に注意すべき代表的な血液データに関して解説しました。
血液データは医師だけが診断のために見るものではありません。
むしろ、直接的に患者に関わる医療従事者こそ知っておかなければならない知識です。
また、これらを把握することは、今の患者の状態を適切に把握することにつながるのです。
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