「膝蓋上嚢」とは?膝関節屈曲制限の原因になる?その役割とは?
ヒトの関節には、
筋肉や腱のみならず、筋膜や靱帯、脂肪など多くの組織が存在します。
それ故に一度損傷し、変性をきたした場合、
その原因を特定するのが容易ではなく、また改善するのに苦渋することがあります。
今回は、膝関節周囲に存在する「膝蓋上嚢」に焦点を当ててみます。
「膝蓋上嚢」という組織がどこにあるかご存知でしょうか!?
「膝蓋上嚢」とは、
膝蓋骨の上部に存在する“滑液包”です。
正確には、膝蓋骨の上縁から0.5cm〜1cm程度のところから、
大腿に沿って近位に男性であれば約8cm、女性であれば約6cm程度の長さがあります。
文献)関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーションより引用
ちょうど、大腿骨と大腿四頭筋腱の間に存在しています。
実はこの「膝蓋上嚢」は、
膝関節の円滑な屈伸運動に非常に重要な役割を担っているだけでなく、
障害を受けることで容易に膝関節屈曲制限を引き起こす組織であり、
膝関節周囲の骨折や手術において無視することの出来ない重要な組織です。
そこで今回は、「膝蓋上嚢」の役割や、膝関節屈曲障害との関係について解説します。
「膝蓋上嚢」の役割とは?
「膝蓋上嚢」は、
前述したように膝蓋骨の直上で、
大腿四頭筋腱の深層に位置しています。
なぜこのような場所にあるかというと、
膝関節の円滑な屈伸運動に一役買っているのです。
どういうことかというと、
膝関節が伸展位にある場合、
「膝蓋上嚢」は、いわゆる“二重膜構造”を呈しています。
文献)関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーションより引用
膝関節が徐々に屈曲していくと、
膝蓋骨の下方へ滑りながら二重幕から“単膜”へと変化していきます。
文献)関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーションより引用
まさに筋肉が大腿骨上を長軸に滑っていくのを
円滑にする潤滑剤のような働きを担っているのです。
「膝蓋上嚢」の障害と膝屈曲制限の関係とは?
「膝蓋上嚢」が、
膝関節の長軸運動に伴う屈伸運動を
円滑にする作用を担っていることを前述しました。
膝関節周囲の骨折による手術や、
人工関節手術などにおいて同部位に手術侵襲が加わると、
その回復過程において膝蓋上嚢が癒着を起こす可能性があります。
多くの場合、膝関節を深屈曲位で保持することはないため、
伸展位での固定が長引く可能性があります。
そのような場合、二重膜構造の状態で癒着を起こすため、
膝関節屈曲に伴う単膜構造への変化を起こせず、
“膝関節が屈曲していかない”
という状態に陥ります。
比較的癒着が生じやすい組織であると同時に、
一度癒着すると重篤な屈曲制限を起こしやすく、
手術などによって組織を剥離するなどの処置が必要となります。
また、「膝蓋上嚢」の癒着が原因で膝関節の屈曲制限が生じる場合、
屈曲70°以上は行えないと言われているそうです。
「膝蓋上嚢」の癒着を生じさせないためには?
「膝蓋上嚢」の癒着を生じさせないためには、
そのメカニズムを理解し、
術後などに長期の不動を避ける必要があります。
また、直接的に「膝蓋上嚢」を圧迫しながらダイレクトに動かしたり、
「膝蓋上嚢」をつまむように把持しながら側方にスライドさせるようにモビライゼーションすることなども有効とされます。
癒着してからでは遅いので、
早期より癒着の予防をしていくことが何よりも重要となります。
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