不幸の三徴候(アンハッピー・トライアド)とは?

    
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スポーツには外傷がつきものです。

特に膝関節周囲は、構造的にも機能的にも受傷しやすい部位であり、

治療も長期化することがあります。

その中でも、最も最悪な外傷と言われるのが、

「不幸の三徴候」と呼ばれる複合損傷です。

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膝関節の安定化には、

周囲の筋のみならず、前後左右に存在する靭帯が寄与しています。

また、大腿骨と脛骨の間には、

半月板と呼ばれる線維軟骨が存在し、

円滑な屈伸運動や、衝撃に対する緩衝作用を有しています。

 

これらの組織は、

交通事故やスポーツなどによる強力な外力によって損傷することがあります。

特に若者に好発するスポーツ外傷では、

・タックルなどによる接触性の要因
・ジャンプや急激な方向転換による非接触性の要因

があり、

それぞれ、靭帯損傷半月板損傷を呈すことがあります。

 

靭帯損傷にも様々な種類があり、前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靱帯、外側側副靭帯のそれぞれ、または複合的な損傷の危険があります。

また、半月板損傷においても単独損傷のみならず、靭帯損傷との複合損傷を認めます。

 

これらの中でも最も重篤な膝関節の複合損傷は、

【前十字靭帯損傷】
【内側側副靭帯損傷】
【内側半月板損傷】

の同時受傷であり、

「不幸の三徴候(アンハッピー・トライアド)」と呼ばれています。

そこで今回は、不幸の三徴候(アンハッピー・トライアド)について解説するとともに、それら単体での疾患についても特徴を解説します。

「不幸の三徴候(アンハッピー・トライアド)」とは?

「不幸の三徴候」は、アンハッピー・トライアドと呼ばれ、

文字通り、膝関節周囲の外傷において、最も不幸な複合損傷と言われています。

 

不幸の三徴候は、

前十字靭帯損傷
内側側副靭帯損傷
内側半月板損傷

の複合損傷です。

 

受傷機転は、荷重時において

“つま先が外側を向いている状態で、膝が内側に倒れ、かつ回旋が加わった時”

であります。

 

それぞれ単独の外傷においても、手術療法が適応されれば、競技復帰には半年以上の歳月を有しますが、

不幸の三徴候では、早くても1年、長ければ2年のリハビリテーション期間を有するとされています。

競技復帰が叶えば良いものの、中には選手生命が絶たれる場合があり、予後不良の外傷として知られています。

 

以下にそれぞれの単独損傷についても解説します。

 

 

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷は、膝関節に外旋力が加わった際に受傷します。

急激な方向転換やジャンプの着地時などが受傷機転となります。

単独損傷もさることながら、上記の「不幸の三徴候」などといった複合損傷が約50%を占めます。

 

受傷時には、膝の疼痛や断裂音が生じますが、

慢性期においても歩行可能な場合が殆どです。

ただし、膝崩れ(ギビングウェイ)と呼ばれる、膝の不安定性が残存し、放置すれば将来的に変形性膝関節症に進展することも少なくありません。

 

前十字靭帯の治療法は、スポーツ復帰を目指す場合【手術療法】が一般的です。

靱帯再建術には、2種類の方法が存在し、術後よりリハビリテーションを開始します。

最短でも競技復帰には、半年程度の日数を有するとされています。

 

前十字靭帯損傷に関する詳しい記事は以下
前十字靭帯損傷とは?受傷機転や症状、その治療方法は?
前十字靭帯損傷に対する手術療法!STG法やBTB法とは?
前十字靭帯損傷の手術後のリハビリテーション方法は?
前十字靭帯損傷後は歩ける?合併症や後遺症に注意!

 

 

内側側副靭帯損傷

内側側副靱帯損傷は、膝周囲の靱帯損傷の中では最も頻度が高く、

スポーツなどにより強力な外反力が加わって受傷します。

 

受傷後は、受傷部位の疼痛や外反不安定性を認めます。

内側側副靱帯単独損傷では、靱帯自体の治癒力の高さから、保存療法で経過良好な場合が殆どです。

ただし、外反不安定性が強い場合には、自家腱を用いた再建術が行われます。

 

内側側副靱帯損傷に関する詳しい記事は以下
内側側副靱帯損傷とは?原因や症状、その治療法は?
内側側副靱帯損傷の重症度分類とは?
内側側副靱帯損傷の診断方法や徒手的検査法とは?
内側側副靱帯損傷のリハビリテーションとは?競技復帰までの期間は?

 

 

内側半月板損傷

内側半月板損傷は、荷重下において膝関節が屈曲かつ異常な回旋力が加わることで受傷します。

スポーツ外傷が多く、合併損傷では前十字靭帯と複合損傷します。

 

受傷後は、関節裂隙の疼痛が生じるとともに関節血症を合併することがあります。

慢性期においては、

膝屈伸時の引っかかり感(catching)、
クリック音、

などが生じることがあります。

 

内側半月板損傷の治療は保存療法では無効な場合が多いとされ、

関節鏡視下での縫合術や切除術が施行されます。

 

内側半月板損傷に関する詳しい記事は以下
半月板損傷とは?原因や症状、その治療方法とは?
半月板損傷に対する手術療法!種類や方法、関節鏡視下手術って何?
半月板損傷における手術療法後のリハビリテーション方法は?
半月板損傷の診断方法とは?

 
 
 

まとめ

今回は、不幸の三徴候(アンハッピー・トライアド)について解説するとともに、それら単体での疾患についても特徴を解説しました。

多くのスポーツ選手の選手生命や、パフォーマンスの低下を招いたきたこれらの疾患…

外力による受傷では予防することは難しいですが、

身体の柔軟性の維持やコンディションの調整など、少しでも怪我をしにくい身体作りが重要ですね。


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