下肢切断後に屈曲などの拘縮を引き起こしやすい理由とは?

    
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下肢の切断において歩行再建の鍵となるのが義足です。

 

そして、この義足の装着の可能かどうかの判断や、

適切に使いこなせるかの予後を左右する要素となるのが、

拘縮の有無です。

 

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近年では、

外傷や腫瘍などによる切断患者は減少傾向にありますが、

反対に糖尿病循環障害による切断患者が増加傾向にあります。

 

いわゆる生活習慣病に起因したこれらの切断は、

今後もますます増加すると言われています。

 

下肢の切断においては、

歩行再建において重要なツールとなるのが、義足です。

 

下肢切断の中でも歩行獲得が最も困難を極めるのが、

大腿切断であり、

再び歩行を再建するためにリハビリテーションなどを実施します。

 

義足の装着において、

可能かどうかの判断や機能予後を左右する因子の一つとして拘縮(固まって動かなくなる)があります。

 

実は、大腿切断では、

ある特定の方向へ拘縮が生じやすく、これらの管理を適切に行い拘縮を予防する必要があります。

 

ではなぜ、大腿切断などの下肢切断において、

特定の方向へ拘縮が生じやすくなるのでしょうか?

そしてその方向とはどの方向なのでしょうか?

大腿切断

拘縮しやすい運動方向は?

大腿切断とは、

大腿骨レベルでの切断であり、

断端の長さによって「短断端」「中断端」「長断端」に分類されます。

 

いずれの切断においても拘縮しやすい方向は、

屈曲・外転・外旋です。

 

残存する断端が短いほど、

拘縮を生じやすくなります。

 

 

特定の方向に拘縮しやすい理由とは?

大腿切断において屈曲・外転・外旋方向へ拘縮しやすい理由とは、

屈筋と伸筋、内転筋と外転筋、内旋筋と外旋筋など、拮抗筋間の張力のアンバランスがあります。

 

股関節の最大の屈筋といえば腸腰筋ですが、

腸腰筋の付着部は大腿骨の小転子です。

 

一方、股関節の伸筋であるハムストリングスは、

脛骨の近位や大腿骨の遠位に付着します。

 

つまり、大腿骨の切断によって伸筋機能の方がより不全となり、

相対的に屈筋が強まり屈曲方向へ拘縮しやすいのです。

 

同様の理由で股関節の内転筋よりも付着部が近い中臀筋などの有する外転筋が引っ張られるために外転方向へ、

深層外旋六筋が残存するために外旋方向に拘縮しやすくなるのです。

 

 

その他の要因とは?

筋張力のアンバランスによる要因のみならず、

日常生活動作に依存する部分もあります。

 

具体的には、

病院では義足歩行が可能になるまで車椅子上で過ごすことが多くなります。

その際には股関節が屈曲位となりますね。

 

その他にも仰向けで寝ていても、

頭を挙上するだけで軽い足がフワリと持ち上がり屈曲位を取ります。

 

このように、日常生活では多くの場面で股関節が屈曲位となってしまうのです。

これらを防止するためにも長時間の車椅子乗車を避けることや、

腹臥位を保持する時間を確保するなどの自己管理が重要となります。

 

 

まとめ

今回は、大腿切断などの下肢切断において特定の方向へ拘縮が生じやすくなる理由や、その方向について解説しました。

拘縮しやすい方向は、屈曲・外転・外旋でしたね!

リハビリテーションでの拘縮予防はもちろんのこと、

日常生活動作においてもそれらの肢位と反対の方向でいる時間を長く取り入れる工夫が重要です。


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